おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

この子は生まれ変わりです


遺影写真のおじいちゃんは、微笑んでいました。


故人には、赤ん坊の時から面倒を見てきた、お孫さんがおります。
数年前の結婚式に参列できたのを、とても喜んでいたそうです。


納棺式、通夜式と、彼女は大きいお腹を、かかえて参列しました。


葬儀に、妊婦の参列は、あまり良くないと言う言い伝えがあります。
 
あくまでも、迷信ですが、まだ気になさる方も多く、親族からは


 「お棺には近づかないように」
 「骨上げには行かないで」
 「お腹に、鏡を入れて」    
 
などと言われていました。


そのたびに、彼女は
 
  「大丈夫です。可愛がってくれたお祖父ちゃんに、しっかりお別れをします」
 
と、きっぱりと答えていました。


臨月と聞いていましたので、私達も急な事態に備え、車椅子を用意し、
段差のあるところはセレモニーアシスタントさんが手を繋いで先導し、
お腹が冷えないように、ひざ掛けを用意するなどと、気を配りました。


翌日の告別式では、お顔が見えなかったので、
遠慮されたのかなと思いつつ葬儀式は進行し、出棺しました。


火葬場に着き、炉のスイッチが入り、ゴーと言う音が聞こえてきた時です。


そのとき、喪主様の携帯が鳴りました。
 
 「生まれた。男の子。母子ともに元気」


喪主様にとっては、初孫です。
期せずして


 「おめでとう、おめでとう」


の声が、あがりました。


火葬場で「おめでとう」を聞くのは始めての経験でした。


しばらくして


 「葬儀屋さん、いろいろご心配をかけてすみませんでした」


喪主様が、見せてくれた携帯の画面には、
遺影写真のおじいちゃんに目元がそっくりの赤ちゃんが写っていました。

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