おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

お斎の作法をお話します

葬儀会館ではお葬式だけでなく法事も行われます。法事では菩提寺のお寺様を呼んで読経を行い、参列者は焼香と合掌で故人を供養します。その後、お斎(おとき)と呼ばれる会食を行ないながら故人を偲ぶ時間が流れていきます。


お寺様が読経と焼香を行なう儀式のことを「法要」と呼び、法要の後の会食までを含めたイベントの場合は「法事」と呼ぶのが本来の意味に合った言い方です。


初七日法要はお葬式と同日に行う喪家様が大部分です。その後の四十九日の満中陰や100日目の百箇日忌や一年後の故人の命日に行なう一周忌、満2年目の三回忌、満6年目の七回忌そして十三回忌や十七回忌は葬儀会館を使う法事が行われます。


法要の後に行なう食事の席がお斎です。「斎」という字は仏教の用語の斎食(さいじき)からきています。僧侶が決まった時刻にとる食事を指す言葉です。昔は肉や魚を使わない精進料理でしたが、今は決まりが無くなりました。それでも伊勢海老や鯛などのお祝いごとに使われる食材は避ける,メニューが出されています。


お斎の席の正面に位牌と写真を安置します。位牌の前に杯に入れたお酒を手向けます。法要と同様に席順を決めます。お寺様には上座の中でも最も故人に近い席に座ってもらいます。施主は御礼の会話ができるよう、お寺様の前か隣に座りましょう。
法事の食事を楽しみにしているお寺様も多いのですが、お勤めの都合等でお食事を断られた場合は「御膳料」をお包みするのが通例です。お寺様にお酒を勧めるかどうか迷われる方もおられますが「お飲み物はいかがいたしましょうか」と伺います。この頃は、自家用車で来るお坊様も多くなりアルコールはほとんど召し上がりません。


全員着席後、施主から簡単な挨拶をします。
「本日はお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。お陰様で○○忌法要を無事に終えることができ、故人もさぞかし喜んでいると思います。本日は皆様と故人の思い出を語らいながら、冥福を祈りたいと思っております」
そして、献杯のグラスを捧げます。


お斎のお開きの時間が迫ってきたら、返礼品を参列者のお膳の前に配布していきます。事前にお膳の横に置いておくのも、無礼には当たりません。


都合で法要の後でお斎に参加できない場合は、最初に施主に告げましょう。お斎の食事は人数分のお膳を用意するので急な不参加は迷惑になりかねません。


お斎は、故人を偲び、お寺様をもてなし、家族、親戚、ご友人方の参列者同士の交流の場となる大切な場です。そして、お葬式を無事に終えた達成感を全員で確認しあう場でもあるのです。


付け加えると、グラスをあげる時に
「献杯(けんぱい)」
と静かに発声して故人の写真に目を合わせることを忘れないでください。

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