おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

秘密を守る公正証書遺言

葬儀屋の窓口は、悩んでいる方の相談を受ける場所でもあります。終活ブームのこの頃では、自分の死んだ後に隠している秘密をどうやったら家族に伝えられるかを相談する人も出てきます。生きている今は、内緒にしておきたいのだが、死んだ時に暴かれて、家族が大騒ぎする前にしっかりと伝えておきたいなどの深刻な相談もありした。


例えば、隠し子とか隠し財産とか趣味の骨董品を入れてある隠しロッカーなどです。亡くなった後に家族に伝えたいなら自筆遺言を残されたらどうですかと話します。ですが生きている間に見つかったら嫌だとか、自分でメモ書きのように書いた遺言は相続が起きたときに法律上不備が多くて、スムーズに進まないだろうとも言います。


自身の死後に問題なく伝えたい内容があるなら公正証書遺言は確実に秘密を守ることができる書面です。この遺言は公証人と遺言者に加え証人2人の立ち会いで作成されます。公証人には法律上の守秘義務が課されていますし、公証人を補助する書記も職務上知り得た秘密を他に漏らさないことを宣誓してから採用されています。ですから作成する側から秘密が漏れる心配は絶対にありません。


公正証書遺言は証人2人が必要です。未成年者や利害関係者は証人になることができません。利害関係とは遺言者が亡くなったときに相続人になる人や、遺言により財産をもらう人の他、これらの人の配偶者や直系血族も含まれます。遺言作成の資料を司法書士に依頼した場合には、司法書士に証人として立ち会ってもらいます。司法書士は守秘義務があり遺言の内容が漏れてしまう心配はありません。


原本は公証役場に厳重に保管され、遺言者の死亡日まで他人の目に触れることは絶対にありません。もし震災等により原本や謄本が滅失しても必ず復元が出来るようにする原本の二重保存システムも構築されていますので保管の点からも安心です。


遺言を作成する時は遺言執行者を指定します。遺言執行者を指定しておくことで遺言の内容を速やかに実行することが可能になります。相続人の中から遺言執行者を指定すると他の相続人から不信感を持たれてトラブルになります。利害関係人以外第三者で弁護士、司法書士、行政書士を遺言執行者に指定します。


作成費用は全財産の合計で変わりますが公証人に依頼して、公証人役場で作成した場合には手数料と司法書士の費用5万円を合わせて合計15万円程度かかります。


遺言者の死後、遺言執行者から連絡が入りますが、その前に公正証書遺言が書かれているかを家族は調べることが出来ます。遺言検索システムという相続人などの利害関係人が利用するシステムです。ですがこのシステムは内容までは教えません。


遺言書は作るだけでは意味がなく、内容が実行されて初めて価値が出る書類です。


ここまで読んで「俺には秘密も隠し財産もない」と思われた貴方は幸せな人生です。

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