おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

ご臨終の脇で慌てないで

亡くなる方の9割が病院で息を引き取ります。担当医がベッドに寝ている身体を検査して「ご臨終です」と家族に伝えます。看護師さんがエンゼルセットを持って病室に入ってきます。ご遺体の身体を綺麗にすると「葬儀屋の手配は済ませましたか?早く運び出して下さい」と告げます。夜中だからとか、家族がそろっていないからなどは通りません。この時からお葬式の準備が始まります。「まだです」と答えると「出入り業者を紹介します」と告げ、勝手に知らない人間が入ってきます。


亡くなる前に葬儀社を決めておく家族はほとんどいません。葬儀の生前予約や葬儀ホールを生前に見学することが多くなっていると言われますが、「死んでもいないのに、葬儀のことを考えるのは縁起でもない」と、いう家族はまだまだ多いのです。


病院で亡くなった患者をベッドに寝かせておくことが出来る時間は、決して長くはありません。周りからせかされて結局、病院と提携している業者に頼みとりあえずご遺体を自宅まで運んでもらう方がとても多いのです。


病院が紹介する葬儀屋は高いと言われています。それでもやむなく頼んでしまうのです。「家まで搬送した葬儀屋に必ず葬儀を依頼しなければならないという決まりはありません」とのネットの言葉を信じて、運ぶだけなら大丈夫だと思うようです。ですが病院出入りの業者は地元の葬儀屋でない場合も多く、又搬送専門だけで高額な費用を受け取ったら、後は他の葬儀屋に頼んでくださいと逃げ帰る事もあります。


結局驚くほど高い搬送料金を払い、お葬式にはお金がかかるのだと身をもって理解し始めるのです。これは、とてももったいない事なのです。初めからお葬式を頼む葬儀屋に連絡すればサービスで無料にするか、セット料金に組み込まれています。ですから、搬送のためだけに他の業者に余計な料金を支払う必要はありません。


それでは短い時間に信頼できる葬儀屋をどうやって選ぶのかをお話しします。スマホで葬儀屋を検索すると、とんでもない数が出てきます。絞り込むために検索欄の最初に自宅の市町名を入れます。次に葬儀屋と打ち込みます。それでもズラーと並びます。上位5件はテレビコマーシャルで聞く会社名です。この葬儀会社は葬儀の仕事をしません。葬儀屋斡旋業者ですから無視します。もう一度検索欄に続けて「地元密着、信頼、実績」など打ち込むと絞られてきます。葬儀会館の所在地を調べ自宅からの距離や火葬場への順路を検討します。ホールの大きさや、その葬儀屋の特徴などを比べ、口コミも見てみます。その結果で最終的に一社に決めます。そして自宅搬送の電話を掛けるのです。


突然の死去に慌てているし、かつ周りがせかしているときに、葬儀会社を探す余裕や手間などは無いと言われるかもしれません。しかし搬送前に葬儀屋を決定することで、その後がスムーズに進行することが多いのです。


最初からお宅に任せると言われた葬儀屋は、葬儀を行うご家庭を全力でサポートします。とりあえず運んでくれと言われた業者とは対応が格段に違うのです。


臨終のベッドの脇でまず行うことは、スマホを手に取り地元の葬儀屋をリサーチすることからお葬式が始まります。

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