おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

お葬式を行なう理由とは

葬儀会館の見学会に訪れる方や、当分自分は死なないけれど終活のために葬儀を知りたいと言う人が増えています。その方々の中には「高いお金をかけてお葬式をする理由が解らない」と質問される方もおられます。


皆様は何故お葬式をするかと聞かれたら何と答えますか。葬儀業界には、葬祭ディレクターという資格試験があります。公式テキスト『葬儀概論』には、お葬式を行う理由として「6つの項目」が提示されています。


1 社会的な理由
お葬式には故人が亡くなった事実を社会に知らせる役割があります。役所に死亡届を出して戸籍から抹消してもらいます。有名人のマスコミ報道や過去には町内の葬儀のお知らせで故人の逝去を知ることもありました。


2 遺体の処理という理由
遺体は保冷を行い、その後火葬して遺骨にします。遺体を放っておくと腐乱で公衆衛生上問題になります。棺に納め火葬炉で火葬しお墓に納め土に返すのです。ちなみに、お葬式の「葬」という字は草冠に死そして下部も草を表す形で出来ています。土の中に遺体を安置しその上に草をかける土葬の姿を現したものです。


3 霊の処理という理由
霊魂を宗教者の力で送ります。我々は身体が無くなっても心は残ると考えました。亡くなった人の霊を鎮めるために宗教家を招いて成仏させるお葬式を行うのです。


4 悲嘆の処理という理由
お葬式は残された家族の悲しみを和らげます。過去ブログで綴ったグリーフケアです。全員で故人を悼み、そして慰め励まし合うことで、悲しみは癒えていきます。


5 様々な感情の処理という理由
愛する人がいなくなると大きなストレスを受け、残された人の心を壊し始めます。儀式を通じて、その様々の感情を緩和する効果を与えるのがお葬式です。


6 教育的な理由
大切な人の死から学ぶことで人生観も変わることもあります。お葬式は命の尊さやはかなさを教えてくれます。普段では感じることのできない死を学び、自身も必ず死ぬこと知ります。お葬式には、死と生の大切さがわかる役割があります。


以上がお葬式を行う理由についての、葬儀業界の公式見解です。


私の見解は、お葬式をおこなう一番の理由は、残された家族が気持ちの整理をつけるために執り行われると思っています。
送り出す皆様が「故人に感謝を表し、しっかり来世に送りだすことが出来た」と、信じて安心し、満足感を得るために、お葬式は行われます。

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