おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

望み通りの死に方

先月、ご主人を送った喪家様より、満中陰(49日忌)の法要が、
無事に終わりましたと、連絡が入りました。


満中陰まで飾っておいた、後祭り祭壇の片付けに、伺いました。


 「お葬式では、お世話になりました。やっと、気持ちの整理がついてきました。
  あっと言う間の別れでしたが、本人は望み通りの死に方だったと思います。」


お茶菓子を勧められ、しばらく奥様との、お話が続きます。


そういえば、死亡診断書には、
 
 「心筋梗塞にて短時間で死亡」
 
と、記入されていた事を、思い出しました。  


夕方、胸が苦しいと、訴えて倒れ、救命に運ばれた時は、心停止だったそうです。


亡くなったご主人は、老人介護の仕事に就いていました。


痴呆が進み、手づかみで食事をする老人たちの、食事補助や、
ウンチやオシッコを垂れ流しする老人たちの、排泄補助や、
寝たきりになり、身体のアチコチが、床ずれで腐ってくる、
皮膚の治療など、毎日、身体の自由がきかない老人たちを、
必死で介護にあたっていたそうです。


疲れて帰宅すると、


 「俺は、誰にも迷惑をかけずに、スーといなくなりたいな」


が、口癖だったそうです。


お話の最後に、奥様が言われた、一言が、記憶に残りました。 
 
「身体が動かなくなってもいいから、もう少し、一緒に過ごしたかった」

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