おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

お坊様の衣装を教えます

葬儀式の30分程前になると、本日の導師を務めるお寺様が来館します。御導師控室に案内し、お茶とお菓子の接待をして、喪主を呼び、お布施のやり取りを確認します。本日のお寺様も、しっかりと金銭を受け取ると、立派な服装にお着替えの時間です。


お坊様が着用している衣服を袈裟(けさ)や法衣(ほうえ)と呼びます。袈裟は僧侶が着用する煌びやかな生地の衣装です。ヒンズー教のカサーヤと言う言葉が袈裟の語源です。法衣は袈裟の下につける着物です。


テレビでタイのお坊さんたちが全員黄色い質素な服装で歩いているのを見たことがあると思います。僧侶は衣服の色が定められているのです。お釈迦様は青、黄、赤、白、黒など正色と呼ばれる原色と、間色と呼ばれる紅、紫、碧、黄、緑の衣類を使用してはいけないと教えました。あの黄色味は、鉄の錆びた色や河の泥の色や樹皮の色や赤土の色から来た色で、如法色と言われる仏法にかなう色なのです。


お釈迦様が定めた衣服の色もインドから中国へそして日本にと伝わる間に、僧服が変わっていきます。日本では祭祀の司祭としての立場から冠位十二階で定められた国家の規定による色を使うように決められました。
紫を上位にして深紫、浅紫、濃青、薄青、濃紅、薄紅、濃黄、浅黄、濃白、薄白、濃黒、薄黒になります。なかには萌黄、鳶色、紅香、藤色、栗皮色など、あまり耳にしたことのない色の生地も袈裟に使われるようになったのです。


普段着ている黒の法衣の上に袈裟をまとうと仏教僧侶の制服になります。袈裟を広げると大きな長方形になっています。そして実は一枚の生地ではありません。いくつかの生地を縫い合わせています。お釈迦様が端切れ生地を縫い合わせて服にしたことが由来です。縫い合わせた生地を五列並べたものが五条袈裟と呼ばれます。周りを黒い縁で囲み中に白茶の生地が五列はめ込まれています。普段生活するのはこの衣装です。


七列の生地を張り合わせたのが七条袈裟と呼ばれます。お勤めで御本尊に向かわれる時には七条袈裟以上を身に付けます。煌びやかな色遣いの生地を縫い合わせてあります。この上に九条袈裟もあります。厚手の絹生地で当然とても高価で百万単位になります。


このほかにも首からかけるエプロンのような形の絡子(らくす)と呼ばれる禅宗で使われる袈裟で片方の紐に環が付いている衣装や、威儀細(いぎぼそ)という環をつけない浄土宗のお袈裟などもあります。


日蓮宗や法華宗などの檀家の人たちが、肩からかけているのが折五条と呼ばれる肩袈裟です。ご本尊に向き合うときの正式な衣装になります。


お葬式参列したら、ありがたいお経と共にお坊さんの着ている荘厳な袈裟をじっくり眺めてください。お布施が高価な理由の一つが解かると思います。

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