おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

DIYで葬儀を行います

「葬儀屋さん、自分一人で親父の葬式をやっているのだが、病院から一人で運んだし、棺桶も買ってある。火葬場だけ手伝ってほしい」とんでもない電話がかかってきました。オイオイそれでは葬儀屋はいらないじゃないか、と突っ込むところですが、一応お話を伺いに、電話先のご自宅に向かいました。リビングに綺麗に背広を着た仏様が寝ていました。


「病院から、ご自宅まではどうされたのですか」
「車イスに乗せて自宅まで自家用車で連れて来た。うちの車は車イスが乗るので」


遺体は勝手に動かせないと思いがちですが個人が自家用車で行っても違法ではありません。必ず死亡診断書を忘れずに携帯してください。検問で死体を乗せた車が見つかると大騒ぎです。今回は車イスでしたが、ストレッチャーや担架で寝かせて搬送しないと、遺体から体液が漏れる可能性があります。後部座席に寝かせて運ぶのも不安定で難しいと思います。


死亡から24時間は火葬できません。何方かに安置します。仏様は綺麗に着替えていました。


「着替えは、お一人でなされたのですか」
「大変だったけど何とか着せた。ドライアイスはスーパーで貰ってきた。親父の言いつけは金をかけるな、出来ることは自分でやれ、なのでDIY葬をしている」
「この棺桶は、どうされたのですか」
「アマゾンで買った。配送料込みで26500円だった」


市役所手続きも済ませていました。死亡届を出し火葬場の予約も葬儀屋が代行でなくても個人で足を運べば受け付けてくれます。


火葬場に運ぶのも自分でと考えていたようですが、棺桶に納めてしまうと自家用車では運べません。パネルバンのレンタカーを借りようと交渉したら、棺桶を積むのは、規約違反ですと断られたそうです。これで葬儀屋に電話がかかってきた原因が分かりました。


「それでは霊柩車をレンタルします。棺桶は1人では運べないので、サービスで火葬場まで私が手伝います」


翌日、初めての霊柩車の運転で、はしゃいでいる息子さんと火葬場に向かい、二人で棺桶を持ちあげ火葬炉に無事に納めました。骨壺は海外で手に入れたという、金属製の壺を持ってきていました。少し小さいのでお骨全部は難しいようですが、少しで良いとの答えでした。火葬場からはバスで帰ると言われたので、後はお任せしました。


請求は霊柩車レンタル代の一万円だけです。今回のように火葬に必要な最低限のものを自分で用意しておけば、葬儀の費用はかなり抑えられます。葬儀社がやることを自分でやるのでそれなりに大変ですが、不可能ではありません。少し前までは町内会などの長老が自分たちで行っていた時代もありました。


しかし皆様に、このDIY葬はお勧めしません。
理由は、葬儀屋の出番が無くなり、私が失業してしまうからです。

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