水子に父親が出来ること
前回のブログで死産について取り上げたら、生まれなかった子を送る方法を教えてくださいとの連絡を貰いました。前述したとおり12週以降出産前までに残念ながら育たず死産になった赤ちゃんを送るには、産科医が記入した死産証書を貰い死産届を市役所に提出します。火葬許可書が出るので火葬炉を予約し火葬します。胎児のお骨を残すのは大変難しく、まだ火葬炉がフル稼働にならない朝一番の予約を取るようにしています。
死産児を送った一組の夫婦を思い出しました。
若いご夫婦でした。女性はふわふわの産着を着せた赤ちゃんを抱いています。その赤ちゃんは泣き声をあげませんでした。
死産用の棺桶は1尺(約30センチ)からありますが、たまたまその時は子供用の3尺の棺桶しか当社には用意していなかったので、カタログを見せて明日ならば取り寄せますと申し出ました。
カタログを見ていた父親が、
「葬儀屋さん、これ自分が作っても良いのかな」
「もちろんです。良いお考えです。ゆうパックか宅急便の箱を参考にして下さい」
売り上げにならない棺桶を進めたのは理由がありました。火葬場の職員さんが、こう言っていたのです。
(死産児にベニヤ合板の立派な棺を用意してくるが、棺桶を燃やすのに火力を上げなくてはいけないので、中の赤ちゃんが跡形も無くなってしまうのだ。棺桶の灰を集めて渡すのが、なにか心苦しくて)
数時間後、父親が天使の包装紙でくるまれた、かわいい箱を持ってきました。
箱の裏蓋には、抱くことのできなかった子にメッセージが書いてありました。
赤ちゃんはずっと病院から抱いていた母親から、手作りの小さい棺に移されました。
「俺がしてあげるのは、このくらいしか無い」
父親がそっとつぶやいたのが、聞こえました。
火葬場にご一緒し、職員さんへ、
「手作りの紙箱です。よろしくお願いします。」 「了解」
小さい骨壺に、立派なお骨が入りました。
二人の子供に生まれてきた証拠だと主張しているように感じました。