おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

四十九日かけて極楽往生

お葬式を挙げられた喪家様から四十九日の法要の連絡が入ります。仏前のお花を手配して、法要後に不要になった「後祭り段」を引き取りに伺います。四十九日には「満中陰」「忌明け」「七七日」などのさまざまな呼び方があります。亡くなった日を命日として、その日から四十九日目が極楽往生の日です。


仏教では死者の霊は亡くなった日から四十九日間はこの世とあの世を、さ迷っているとされています。亡くなった人は七日ごとに、七人のお釈迦や菩薩様に会います。命日から七日目を初七日(しょなのか)、二七日(ふたなのか)、三七日(みなのか)と数えていき、それぞれの担当の仏様の面接を受けます。過去ブログの「あなたは死んだ後忙しい」に詳しく書き込みました。特に五七日(ごなのか)では地蔵菩薩の化身の閻魔大王からの審判が下ります。やっと極楽に着くのが四十九日目です。


四十九日が三ヶ月をまたぐことを避ける風習もまだ残っています。三か月にまたがることを「三月(みつき)掛け」または「三月(みつき)またぎ」と言い、縁起の悪いものとして避けるのです。理由は「始終(四十)苦労が身(み)につく」の語呂合わせからです。そのため四十九日法要は三ヶ月をまたがないよう早めにおこないます。


お葬式の時にお寺様が書いてくれた白木の位牌は、野辺送りの仮の位牌です。四十九日までは、遺影、骨箱と一緒に後祭り段に祀っておきます。この白木の位牌は四十九日法要までに漆塗りの本位牌に作り替えます。戒名の文字入れに2週間ほどかかるので早めに仏壇店に依頼しておきましょう。不要になった白木位牌は四十九日法要の時にお寺様が持ち帰ります。浄土真宗では本位牌は使わず、過去帳に法名や命日をお寺様が覚書として記入します。


一般には四十九日までが忌中(きちゅう)で、この期間は御祝い事の出席や、神社への参拝は控えるようにします。四十九日を過ぎると忌明け(きあけ)となります。


神棚があるお家は、死者が出ると神棚の扉を閉め、白い紙を張って封印する「神棚封じ」をしますが、四十九日後、貼り付けた半紙をはがします。仏壇の扉も同様に閉めた方が良いのかと聞かれますが、開けたままで良いと答える宗派が多いです。法要後魂入れをした新しい位牌を安置します。亡くなったばかりの新仏(にいぼとけ、あらぼとけ)が、無事に仏様になり、仏壇に並んでいるご先祖のご位牌に迎えられるのです。


四十九日目は、それまで喪に服していた遺族が日常生活に戻る日でもあります。
傍にいた人が急にいなくなり、二度と会うことの出来ないショックを、いつまでも引きずる方も多いのです。しかし、亡くなった方は残された方がいつまでも悲しむのを望んではいないと思います。


死者が仏様へと生まれ変わる四十九日なら、生きている方が、亡くなった方を偲びながら、悲しみを克服し、日常に戻る気力を生み出すのも四十九日なのでしょう。

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